ひきこもりでも就労移行支援は利用できる?サポート内容やメリット・デメリットを解説
近所のコンビニや、自分の趣味の用事には時々外出するけれど、普段はほぼ家にひきこもって、家族以外には(あるいは家族とも)ほとんど人と接することなく、社会活動にも参加しない…そんな「ひきこもり」と言われる方々が増えています。
内閣府が2023年に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」によると、15〜64歳でひきこもり状態にある人は約146万人と推計されています。
ひきこもりの方の中には、精神疾患を抱えている場合もあり、就職したいけれどもなかなか一歩を踏み出せない、という方も多いのではないでしょうか。
ひきこもりの方が一歩を踏み出すためには、就労移行支援サービスを利用することもできます。
就労移行支援では、ひきこもりの方に対する就労サポートが受けられるので、おすすめです。
この記事では、ひきこもりの方の就労における課題を明確にし、就労移行支援を受けるのが適切なのかどうか、就労移行支援を利用するメリット・デメリットなどについて解説していきます。
ひきこもりの方やご家族の方の参考にしてください。
ひきこもりの方の就労における課題

ひきこもりの方は、就労について以下のような課題や不安を抱えています。
- コミュニケーションの困難さ
- 障がいや疾病
- 就労した経験がないことからくる不安
- 生活が困窮していることへの焦り・切迫感
- 自分の将来に対する不安
長い間他人と接することがなかったために、コミュニケーションに困難さを感じている方が多いです。
特に、発達障害を抱えている方は、コミュニケーションに困難さを感じやすいと言えます。
うつ病や双極性障害、神経症性障害、統合失調症などの精神疾患を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
多くの方が、就労した経験がなく、就労に不安を抱いています。
また、親が年を取って、生活が困窮してくると、焦りや切迫感も生じやすいです。
自分は本当に自立して生活していけるのだろうか、と将来に不安を持つ方も少なくありません。
家族としては、無理に急かすのではなく、本人の話を丁寧に聴きながら、選択肢を一緒に探していく姿勢が大切です。
まずは「話を聞いてくれる第三者がいる場所があるよ」と、地域の支援機関や見学可能な事業所の情報を共有するだけでも一歩です。
ひきこもりでも就労移行支援を利用できる?

ひきこもりの方でも、もちろん就労移行支援を利用することは可能です。
ただ、就労移行支援を利用するためには、障害福祉サービス受給者証を得る必要があり、そのためには、障がい者手帳か、医師の診断書または意見書が必要なため、医療にかかる必要があります。
また、受給者証を申請する際には、相談支援専門員の面談調査を受ける必要があり、基本的には本人との面談調査が必要ですが、事情により家族の同席や支援機関のサポートを受けながら申請を進めることも可能です。
就労移行支援以外にも、ひきこもりの方がサポートを受けられる機関はあります。
就労移行支援以外のサポートを受けられる機関
就労移行支援以外で、ひきこもりの方がサポートを受けられる機関は、以下の4つです。
- ジョブカフェ
- ひきこもり地域支援センター
- 地域若者サポートステーション
- 障がい者就業・生活支援センター
それぞれ解説していきます。
ジョブカフェ(若年者のためのワンストップサービスセンター)
ジョブカフェは、都道府県が主体となって設置・運営する、若者の就職支援を行うところです。
若者が自分に合った仕事を見つけるためのいろいろなサービスを、ワンストップ(1か所)で無料で受けられる施設です。
ジョブカフェでは、個人相談のほかに、就職セミナーや職場体験、職業紹介なども行っています。
(「若者」とは、厚労省の定義では15歳~34歳までを言いますが、令和5年の厚生労働白書では39歳まで含まれており、若者サポートステーションでは49歳までを対象としています)
ひきこもり地域支援センター
ひきこもり地域支援センターでは、社会福祉士や精神保健福祉士、保健師、臨床心理士、公認心理士といった資格を持つ「ひきこもり支援コーディネーター」が、ひきこもりの当事者や家族に相談支援を行い、適切な支援へとつなぎます。
就労関係では、次に挙げる地域若者サポートステーションや、ハローワーク、障がい者雇用促進関係の施設とつながりがあります。
地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーションは、厚労省の委託事業で、15歳〜49歳までの、現在就職・就学していない方に対し、就職から職場定着までを全面的にバックアップする機関です。
相談支援以外にも、コミュニケーション講座やビジネスマナー講座、就業体験や就活セミナーなども行っています。
高校などの中退者には、希望に応じて高校や自宅などへ訪問するアウトリーチ支援もあります。
障がい者就業・生活支援センター
障がい者就業・生活支援センターは、障がいをお持ちの方の職業生活における自立を目指して、関係機関と連携し、地域において就業・生活面での一体的な支援を行います。
通称「なかぽつ」と呼ばれる機関で、医療や就労移行支援、ハローワーク、地域障がい者職業センターなどと連携して動くので、障がい者手帳を持っているなら、まずはじめにここに相談するのも良いでしょう。
就労移行支援事業所はひきこもりの方のサポートに適切

ひきこもり地域支援センターや、障がい者就業・生活支援センターなどから、就労移行支援につながることもあります。
2年間という期間があるのも、徐々に社会生活に慣れていく上で必要であり、それだけ計画的にじっくりサポートしてもらえるということでもあり、重要です。
専門的な知識や経験の豊富なスタッフに、一人ひとりじっくり丁寧にサポートしてもらえる就労移行支援は、ひきこもりの方の就職への第一歩を踏み出す場として適切であると言えるでしょう。
就労移行支援のサポート内容
具体的に、就労移行支援ではどんなサポートが受けられるのか、以下に詳しく見ていきます。
| サポート内容 | 詳細 |
|---|---|
| 生活全般のサポート | ・生活リズムの管理 ・セルフモニタリングの方法 ・ストレス対処法・セルフケアの方法 ・調理などの実習 など |
| 就労スキルアップのためのワーク | ・基礎的なPCスキル(Microsoft officeなど) ・基礎的なビジネスマナー(敬語、メールなど) ・基礎的な接客マナー(電話応対・来客応対など) ・専門的なPCスキル(プログラミング・デザインなど) ・グループワーク(チームでの作業) など |
| コミュニケーションスキルアップのためのワーク | ・SST(社会的なスキルのトレーニング) ・ダイアログ(対話・傾聴の話法) ・アサーション(自他尊重のコミュニケーション) ・アンガーマネジメント(怒りのコントロール) ・レクリエーション など |
| 就職活動へのサポート | ・履歴書・職務経歴書の書き方 ・面接練習 ・合同面接会への同行 ・企業への面接同行 ・ハローワーク、ジョブカフェへの同行 ・職場体験・職場実習 など |
| 就職後のサポート | ・職場訪問 ・定着面談 など |
※サポート内容は事業所によって異なり、すべての活動をやらなければならないわけではありません。
就労移行支援を利用するために必要なこと
就労移行支援を利用するためには、以下の3つのことが必要です。
| 必要なこと | 詳細 |
|---|---|
| 医師の許可(診断書・意見書) | 医療にかかっていない場合は、精神科か児童精神科にかかり、主治医を見つける必要があります。 主治医の診断書・意見書により、就労移行支援を利用することが本人にとって適切であると認められた場合のみ、利用できます。 精神科の受診に不安がある方は、まず「ひきこもり地域支援センター」や「地域若者サポートステーション」で相談し、医療機関の紹介を受けることも可能です。 必要に応じて同行支援が行われる場合もあります。 |
| サービス等利用計画書・セルフプランの作成 |
就労移行支援を利用するためには、障がい福祉サービスの受給者証が必要です。 受給者証を得るためには、障害福祉課に申請して、相談支援専門員のヒアリングを受けながら作成してもらうサービス等利用計画書の作成。または自分で作成して提出するセルフプランの作成が必要になります。 |
| 自治体の認可 | 主治医の診断書・意見書と、面談調査の結果、およびサービス等利用計画書の内容が自治体に認められると、受給者証が発行され、就労移行支援を利用することができます。 |
就労移行支援を利用する流れ
就労移行支援を利用する流れは、以下の通りです。
就労移行支援事業所を探す
まずインターネットで、自分の通える地域にある就労移行支援事業所を探してみましょう。
就労移行支援は、事業所によってサポート内容が異なります。
自分のやりたいこと、学びたいことができる事業所を探しましょう。
自分に合いそうな事業所が見つかったら、見学や体験に行ってみましょう。
事業所によってサービス内容が異なるため、いくつか体験に行くことをおすすめします。
体験した上で、もっとも自分に合いそうなところに決めます。
もし自分で探してもわからない場合や、自分で探すのが難しい場合は、ひきこもり地域支援センターや、なかぽつに相談すると良いでしょう。
市区町村役所に申請する
自分の住民票のある市区町村役所の障害福祉課に行き、就労移行支援を利用したい旨を伝え、申請書を書きます。
すると、役所の方で相談支援専門員に連絡を取ってくれ、指定特定相談支援事業所の相談支援専門員の方から、連絡が来ます。
サービス等利用計画書・セルフプランを作成する
「なぜ就労移行支援を利用したいのか」「目標は何か」「週何日から利用するか」などを指定特定相談支援事業所の相談支援専門員が、ヒアリングをしながら一緒にサービス等利用計画書を作成します。
なお、このサービス等利用計画書は自分ひとりでは作成することができない書類です。
自治体によってはサービス等利用計画書ではなく、自分で作成し提出するセルフプランを提出しなければなりません。
サンヴィレッジでは、担当の職員がヒアリングをしながら、このセルフプランを一緒に作っていきます。
サービス等利用計画書やセルフプランの作成についてのサポートは無料で行っています。
就労移行支援事業所と契約し、利用開始
障害福祉サービス受給者証が発行されたら、それを持って事業所に行き、正式に利用契約を交わします。
契約したその日から利用を開始することが可能です。
ひきこもりの方が就労移行支援を利用するメリット・デメリット

ひきこもりの方が就労移行支援を利用するメリットはたくさんありますが、デメリットもあります。
以下のメリット・デメリットを参考に、自分に合うかどうか考えてみてください。
ひきこもりの方が就労移行支援を利用するメリット
ひきこもりの方が就労移行支援を利用するメリットは、以下の6つです。
- 一人ひとりの状況に合わせた支援を受けられる
- 生活リズムを徐々に安定させていくことができる
- 独学では難しい就労スキルを向上させることができる
- コミュニケーションスキルを向上させることができる
- 一人では難しい就職活動へのサポートがある
- 就職後のサポートもあるので長く働き続けることができる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット1:一人ひとりの状況に合わせた支援を受けられる
就労移行支援では、一人ひとりに担当スタッフがつき、それぞれの状況に合わせた支援を行います。
担当スタッフは、社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士などの資格があり、専門的な知識と経験が豊富で、一人ひとりの状況に配慮して目標やサービス等利用計画を立て、それを実行できるようサポートします。
そのため、その人その人の状況に合わせたきめ細かいサポートが可能です。
メリット2:生活リズムを徐々に安定させていくことができる
就労移行支援は、週3日2時間から通うことができ、だんだんと時間や、週4日、週5日と増やしていけるので、まだ生活リズムが整っていない人でも、徐々に安定させていくことができるようになります。
メリット3:独学では難しい就労スキルを向上させることができる
就労スキルの中でも、ビジネスマナーや接客など相手がいることは、独学では学びにくいでしょう。
また、グループワークなども、独学ではできません。
集団があるからこそ、向上させることができる就労スキルがあります。
メリット4:コミュニケーションスキルを向上させることができる
ひきこもりの方の中には、「集団が苦手」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、就労するには、どうしても集団の中に入る必要があります。
そのため、集団の中で、コミュニケーションを学ぶことは、就労には必須のことと言えます。
就労移行支援では、SSTやアサーションなどコミュニケーションスキルアップのためのワークを行い、徐々に集団に慣れ、コミュニケーションスキルを向上させていくことが可能です。
コミュニケーションはスキルなので、初めは全然話せなくても、スキルアップすることで、怖がらずに他人と話すことができるようになります。
メリット5:一人では難しい就職活動へのサポートがある
就職活動も、一人では難しい面が多いでしょう。
最初は、職務経歴書など何を書けばいいのか全然わからない、面接も緊張して何を言えばいいのかわからない、という方が多いです。
しかし、これも就職活動のサポートに慣れたスタッフから、きめ細かいアドバイスをもらうことで、自分の強みやアピールポイントもわかってきて、だんだん自信を持って活動できるようになります。
メリット6:就職後のサポートもあるので長く働き続けることができる
就労移行支援では、就職後も「定着支援」といって、職場を訪問したり、個人面談をしたり、時には職場との仲介役をしてくれたりというサポートがあります。
これにより、就職後の不安を解消し、職場の理解も進み、安定して長く働き続けられるようになります。
ひきこもりの方が就労移行支援を利用するデメリット
ひきこもりの方が就労移行支援を利用するデメリットは、以下の3つです。
- ひきこもりの方に特化しているサービスではない
- 利用料がかかる場合がある
- 結局就労できない可能性もある
一つずつ見ていきます。
デメリット1:ひきこもりの方に特化しているサービスではない
就労移行支援は、ひきこもりの方に特化しているサービスではありません。
送迎等もないので、自分で家からでて事業所に通うという事が必要になってきます。
まずは、自宅周辺の散歩から等、できそうなことから自宅を出る練習をしてみましょう。
デメリット2:利用料がかかる場合がある
ひきこもりの方は、ご家族とお住まいの方が多いのではないでしょうか。
結婚している世帯で、夫、もしくは妻にが働いている場合は、利用料がかかる可能性が高いです。
利用料がかかるのかどうか心配な方は、お住まいの自治体の障害福祉課に問い合わせてみましょう。
デメリット3:結局就労できない可能性もある
就労移行支援は、就職を約束できるわけではありません。
上限の2年いっぱい通っても、就職できない可能性もあります。
それでも、就労移行支援で学んだり経験したりしたことは、今後の就労にとって無駄にはならないでしょう。
ひきこもりの方にも対応しているサンヴィレッジで、サポートを受けながら就労を目指そう!

ひきこもりの方が就労移行支援を利用する際のサポート内容や流れ、メリット・デメリットについて解説してきました。
兵庫県にお住いの方には、サンヴィレッジという就労移行支援事業所がおすすめです。
サンヴィレッジは、ひきこもりの方にも対応しており、一人ひとりの特性や状況に合わせたきめ細かいサポートが特徴です。
それぞれのスキルや学ぶスピードに合わせた支援で、徐々にできることが増え、不安が自信に変わっていくでしょう。
ホームページを見て興味を持ったら、ぜひ問い合わせて体験に行ってみることをおすすめします。




