学生でも就労移行支援は利用可能?利用条件やメリット・デメリット、事例を紹介
就労移行支援とは、障がいや難病をお持ちの方で、一般企業や官公庁に就職(障がい者雇用含む)を希望される方に、就労に必要なスキルや自己管理のスキルなどを身につけるサポートや、就職活動のサポートをする福祉サービスです。
この就労移行支援のサービスを、学生(大学生、高校生、専門学校生など)でも利用できるのか、疑問に思われる方もいるでしょう。
特に、発達障害をお持ちの方や、在学中にうつ病や適応障害などの精神疾患を患って休学中の方などは、興味があるのではないでしょうか。
実際に、株式会社KEIアドバンスによる全国の370もの国公私立大学の学長を対象に行ったアンケート調査では85%の大学が「メンタルヘルスに問題を抱える学生が増えている」と回答されており、メンタルヘルスに悩む学生は近年増加傾向にあります。
この記事では、学生が就労移行支援を利用するための条件や、利用する際のメリット・デメリット、利用する流れや受けられるサポート、実際に利用した方の事例などを詳しくお伝えしていきます。
学生(在学中)でも就労移行支援は利用できる!

結論から言えば、学生(在学中・休学中)でも条件が合えば就労移行支援は利用できます。
学生であることを理由に他の利用者と比べて優先度が下がる、ということはありません。
実際に在学中・休学中の若年層の利用者も多く、年代別やニーズ別のプログラムが用意されている事業所もあります。
「学生だから浮くのでは…」と不安に思う必要はなく、それぞれに合った支援が受けられるよう配慮されています。
学生の場合は、18歳以上で、何らかの障がいや難病をお持ちの方、もしくは医師の判断で就労移行支援を利用することが適切とされた方が対象です。
他に、厚生労働省の定めた以下の条件を満たすことが必要となります。
学生が就労移行支援を利用するための条件
学生が就労移行支援を利用するためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
大学や地域における就労支援機関等による就職支援の実施が見込めない場合、又は困難である場合 大学卒業年度であって、卒業に必要な単位取得が見込まれており、就労移行支援の利用に支障がない者 本人が就労移行支援の利用を希望し、就労移行支援の利用により効果的かつ確実に就職につなげることが可能であると市町村が判断した場合
引用元:厚生労働省「平成 29 年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A(平成 29 年3月 30 日)」等 の送付について
原則的に、卒業見込みのある大学生を対象としていますが、定時制高校や通信制高校などの高校生で18歳以上の方、あるいは専門学校生や短大生、高等専門学校生、大学院生も対象となり得ます。
自分が利用条件に当てはまるかどうかわからない場合は、自分の住んでいる自治体の障害福祉課に行って、就労移行支援を利用できるかどうか確認してみましょう。
学生が在学中に就労移行支援を利用する際のメリット

学生が在学中に就労移行支援を利用する際のメリットは、以下の5つです。
- 障害や特性に合った手厚いサポートを受けられる
- 学生のうちから就職対策ができる
- 就職後もサポートを受けられる
- 「復学」も目指せる
- コミュニケーションスキルが上がって、仲間もできる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット1:障害や特性に合った手厚いサポートを受けられる
早期に発達障害がわかっていた場合は、療育など適切な支援を受けられていたかもしれませんが、高校や大学に入ってから発達障害がわかった方や、在学中に精神疾患を発症した方などは、まだまだ自分の障がいや特性との付き合い方がよくわかっていないのではないでしょうか。
就労移行支援では、自分の障がいや特性を受容し、理解し、上手く付き合っていく術を学べます。
もちろん、スタッフは専門的な知識と経験が豊富なので、それぞれの障がいや特性に合った、手厚いサポートを受けることが可能です。
具体的に言うと、一人ひとりに担当スタッフがつき、その状況に合わせたきめ細かいアドバイスをしながら、それぞれの悩みや状況に応じて目標設定や計画づくりなどを一緒に考えていきます。
こうして作られた個別支援計画に沿って、それぞれの強みを活かし、苦手を補うことができるような、具体的な訓練やサポートが受けられます。
このようなサポートによって、自己肯定感を形作り、自己効力感を伸ばしていくことができるでしょう。
また、就労移行支援の利用後は、一般企業への就職に限らず、復学・進学・専門学校への編入・福祉的就労(就労継続支援A型・B型)といった選択肢もあります。
利用中に自分の適性を知り、障害や特性に合った手厚いサポートをうけながら、就職を含め最適な進路選択につなげることが可能です。
メリット2:学生のうちから就職対策ができる
在学中に就労移行支援を利用することによって、学生のうちから就職対策ができるのも、大きなメリットです。
大学生は3年次から就職活動が始まりますが、なかなかその波に乗れない方もいるでしょう。
しかし、就労移行支援でサポートを受けることによって、就労スキルを積み、自分に合った就職先を見つけることができるようになります。
人によっては、卒業までに就職先が決まり、卒業後すぐに社会人になることも可能です。
メリット3:就職後もサポートを受けられる
就労移行支援では、就職後も「定着支援」というサポートが受けられます。
定着支援は、就労移行支援のスタッフが、本人と月に一度面談をしたり、職場訪問をしたり、会社との仲介をしたりするサービスです。
職場の業務に不安や不満があったり、人間関係に悩んだりしても、スタッフの方から職場に配慮事項を伝えたり、上司や同僚に掛け合ったりしてくれます。
初めての社会人生活は不安もいっぱいあるでしょうが、この定着支援があることで、安心して社会人を始めることができます。
メリット4:「復学」も目指せる
高校や大学を休学している方は、就労移行支援に通って、復学を目指すこともできます。
精神疾患などになって、休学している方は、生活リズムが乱れてしまったり、復学に困難や不安を抱えたりしている方も多いでしょう。
就労移行支援に通うことで、徐々に生活リズムを元に戻し、学生生活に向けて日常生活の練習をすることができます。
元の学部に復学するにしても、転籍や転校するにしても、スタッフのアドバイスを受けながら、セルフマネジメントやコミュニケーションの方法を学ぶことで、学生生活に適応できるようになります。
メリット5:コミュニケーションスキルが上がって、仲間もできる
在学中に困難を抱えてしまった方は、コミュニケーションに困難さを覚える方が多いです。
就労移行支援では、コミュニケーションの練習をたくさん積むことができるので、コミュニケーションのスキルがアップします。
また、同じプログラムを一緒に行う中で、事業所に通う利用者同士が、仲間になれます。
就労移行支援に通う仲間は、同じような悩みを持っていたり、同じような経験をしていたりするでしょう。
そんな仲間と出会い、わかり合うことで、コミュニケーションの困難さも徐々に解消していきます。
学生が在学中に就労移行支援を利用する際のデメリット

学生が在学中に就労移行支援を利用する際のデメリットは、以下の3つです。
- 学校の授業と就労移行支援のスケジュールが重なる場合がある
- 利用中はアルバイトがしにくい
- 利用料がかかる可能性がある
一つひとつ見ていきましょう。
デメリット1:学校の授業と就労移行支援のスケジュールが重なる場合がある
休学中でない方は、学校の授業と就労移行支援のスケジュールが重なってしまう場合があります。
特に、卒業見込みの方は、学校の授業に出ないと、卒業が危うくなってしまうでしょう。
そうすると、就労移行支援のプログラムにあまり参加できないことになります。
それでは、利用する意味がなくなってしまうので、学校の授業がある方は、授業がひと段落ついてから利用すると良いでしょう。
デメリット2:利用中はアルバイトができない
就労移行支援は、原則として、就労移行支援は「就労に困難がある方」を対象としているため、安定してアルバイトできている場合は対象外と判断される可能性が高いでしょう。
ただし、医師や自治体の判断で「軽微なアルバイト」を許可してもらえる場合もあります。。
制度上「絶対に禁止」とはなっていませんが、学生生活・就労移行支援の訓練、どちらにも支障がない状態でアルバイトをするということになりますので、スケジュール調整が難しいとも言えます。
デメリット3:利用料がかかる可能性がある
学生は、たいてい親(保護者)の扶養に入っています。
そのため、親の収入が一定以上である場合、利用料がかかる可能性があります。
利用料は、前年度の世帯収入によって決まるため、親の収入が高い方は、自治体に確認してみましょう。
学生が在学中に就労移行支援を利用する流れ

学生が在学中に就労移行支援を利用する流れは、以下の通りです。
- 就労移行支援事業所を探して見学・体験する
- 利用を希望する事業所を決める
- 障害福祉サービス受給者証の申請を行う
- 契約して利用を開始する
以下に、詳しく見ていきましょう。
ステップ1:就労移行支援事業所を探して見学・体験する
まず、自分の通える範囲にある就労移行支援事業所を、グーグルマップなどで探してみましょう。
就労移行支援は、事業所によって受けられるサポートが違います。
事業所のホームページなどをよく見て、自分に合いそうなところ、自分がやりたいことをできそうなところを探しましょう。
3か所くらい候補を絞ったら、事業所に問い合わせて、見学あるいは体験入所してみましょう。
ホームページで見るのと、実際に行って肌で感じるのとは違う場合もあるので、必ず複数の事業所に行ってみるようにしましょう。
ステップ2:利用を希望する事業所を決める
いくつか体験入所してみて、一番自分に合いそうなところに決めます。
そこのスタッフに相談してみて、実際に自分が入所可能か確認しましょう。
利用にあたっては、学校側への連絡や調整が必要になることがあります。
また、18歳以上であっても、保護者の理解や協力が求められるケースもあります。
必要に応じて、就労移行支援事業所のスタッフが学校や家庭との連携をサポートしてくれる場合もあるので、不安があれば相談してみましょう。
ステップ3:障害福祉サービス受給者証の申請を行う
事業所を決めたら、自分が住んでいる自治体の障害福祉課に行って、就労移行支援を利用したいことを伝え、申請書をもらいます。
すると、障害福祉課から計画相談の事業所に連絡が行き、相談支援専門員が来て、面談調査(ヒアリング)が行われます。
この調査で、就労移行支援の利用が適切であると認められれば、相談支援専門員と一緒にサービス利用計画書を作成します。
申請書とサービス利用計画書を自治体に提出し、障害福祉サービスの受給者証を申請します。
※自治体によっては、本人が自ら作成する「セルフプラン」による申請が必要な場合もあります。(例:神戸市)
サンヴィレッジでは、担当の職員と相談しながらセルフプランの作成していきます。(無料)
ステップ4:契約して利用を開始する
障害福祉サービス受給者証が発行されたら、受給者証を持って就労移行支援事業所に行き、正式に利用契約を結びます。
契約を結んだその日から、利用開始になります。
学生が就労移行支援で受けられるサポート内容

学生が在学中に就労移行支援で受けられるサポート内容は、以下の通りです。
| サポート内容 | 詳細 |
|---|---|
| 自立訓練 | 生活リズム管理 生活記録表のつけ方 金銭管理の仕方 など |
| 心理教育 | 障がい理解・疾病理解 自己分析・自己理解 コーピング(ストレス対処法) アンガーマネジメント(怒りの対処法) など |
| 職業訓練 | 基礎的なPC操作 Microsoft Officeの使い方 軽作業 基礎的なビジネスマナー(敬語・メールの書き方) グループワーク など |
| コミュニケーション訓練 | SST(社会的なスキルのトレーニング) ダイアログ(傾聴的対話) アサーション(自他尊重のコミュニケーション) レクリエーション など |
| 就職活動のサポート | 履歴書・職務経歴書の書き方 面接練習 合同面接会や企業面接への同行 ハローワークへの同行 など |
| 職場実習・職場体験 | 企業に実際に行って働いてみる体験 |
| 定着支援 | 就労後のサポート |
実際に復学・就職した人の事例

ここでは、実際に就労移行支援事業所サンヴィレッジを利用し就職した方の事例を紹介します。
サンヴィレッジを利用して就職・復学された方の事例はこちらにたくさん掲載しております。
自分のペースを見つけた就職を実現したAさん
Aさんは、特別支援学校を卒業後、サンヴィレッジ川口センターに通所。
自身の課題である「体力とメンタルのバランス」を整えることを目指し、セルフケアの学習にも力を入れながら、インプットとアウトプットを繰り返し、就職に向けて継続的に努力をし続けました。
訓練では、パソコンスキルや軽作業、ビジネスマナーなど幅広いカリキュラムに取り組みつつ、企業説明会や見学、実習にも積極的に参加。
実習では事務・清掃・農作業など様々な職業に触れ、自分に合った仕事を検討していきました。
はじめは「仕事は限界まで頑張らなければならない」と思い込んでいたAさんでしたが、訓練を通じて「頑張りすぎないこと」「リフレッシュの大切さ」を学び、自分らしい働き方やペースを見つけることができたとのこと。
就職活動では、面接対策を通じてサンヴィレッジでの経験を整理し、自分の成長を客観的に把握。
志望動機や強みを明確に伝えられるようになり、不安を乗り越えて希望する「野菜の育成」に関わる仕事に就くことができました。
細かい作業が好きな自分にとってぴったりの仕事であり、植物を育てるやりがいも感じられる職場に出会えたことから、「サンヴィレッジは夢が集まる場所。初めて目標に向けて努力できた」と語るAさん。
仲間たちへの感謝とともに、これから支援を受ける方々に「一人で悩まず、支援員に相談してほしい」と温かいメッセージを送っています。
夢だった仕事に就職できたBさん
Bさんは学生時代に合同説明会を通じてサンヴィレッジの存在を知り、「就活のいろはを学びたい」という思いから川口センターに通所を開始しました。
就職活動がうまく進まなかった当時、サンヴィレッジでは面接練習やセルフケアを含む多様なプログラムに取り組み、学校では学べないことを実践的に学ぶことができたと話します。
とくにセルフケアに関しては、当初は関心が薄かったものの、プログラムを通してその重要性を実感。長く働くうえで欠かせない考え方を身につけられたと振り返っています。
訓練では面接対策に力を入れ、自宅での練習に加え、支援員との対面・Zoom形式の模擬面接を繰り返すことで、自信を持って話せるようになりました。
また、企業面接がオンラインで実施されることも多かったため、日頃のオンライン訓練が大いに役立ったとのこと。
通所中は、学業・訓練・就活が重なりスケジュールと体調の両立に苦労することもありましたが、支援員との相談を通じて計画を整理し、「物事を一つずつ積み上げていく」考え方を学ぶことで、安定した就職活動につなげることができました。
最終的には、夢であった「接客業」に就職。駅の窓口でお客様対応を行う仕事に就くことができ、細やかな気配りや丁寧な接客を活かせる仕事に大きなやりがいを感じているそうです。
Bさんは、「サンヴィレッジは、就職後のことまで見据えてサポートしてくれる場所。自分では辿り着けなかった知識や考え方を学ぶことができた」と語り、「何から始めればよいか迷っている方は、一度利用してみてほしい」と、未来の利用者に向けたエールを送っています。
学生が就労移行支援を利用する場合よくある質問

ここでは、学生が就労移行支援を利用する場合によくある質問を挙げて解説します。
高校生は就労移行支援を利用できる?
高校生でも、18歳以上であれば原則として利用できます。
ただし、全日制の生徒は、3年生になっても授業があるため、相談や長期休みの体験入所などの利用となります。
定時制や通信制で、就労移行支援への通所に支障がない場合は、利用できる可能性が高いです。
いずれにしても、医師の診断書や意見書が必要になります。
高校を中退した場合でも対象になる?
高校を中退した場合でも、18歳以上であれば、対象になります。
むしろ、発達障害や精神疾患などの理由で高校を中退した場合、普通に就職することは難しいため、就労移行支援を利用することが望ましいと言えます。
見学や面談の際に保護者の同伴は必要?
18歳未満の場合は、必要になる場合もありますが、18歳以上であれば、成人として利用契約も結べるため、保護者の同伴は必要ありません。
発達障害にも対応しているサンヴィレッジで一足早く就活しよう!

学生が在学中に就労移行支援を利用する場合について、詳しく見てきました。
兵庫県にある就労移行支援事業所サンヴィレッジでは、発達障害にも対応しています。
一人ひとりの特性に合わせたきめ細かいサポートで、一足早く就活を始めてみませんか?
無料で体験入所も行っているので、まずは問い合わせてみるところから始めましょう。




