就労移行支援を卒業した後の就職先は?主な業種・職種を詳しく解説

令和5年度の厚生労働省の「障害者の就労支援対策の状況」によると、就労移行支援を利用して卒業した人の一般就労への就職率は、29.6%にのぼっています。
それでは、具体的に、どのような業種・職種に就職した人が多いのでしょうか。
この記事では、就労移行支援を卒業した後の就職先で多い業種・職種、そして障がい別の主な就職先などについて詳しく解説します。
就労移行支援を卒業後の就職先で多い業種
就労移行支援を利用して、卒業した後の就職先で多い業種は、以下の通りです。
- 製造業
- サービス業
- 卸・小売業
- 社会福祉
- その他
それぞれ詳しく解説します。
1.製造業
就労移行支援からの就職先として、工場での軽作業は特に多く見られます。
具体的には、以下のような作業です。
- シール貼り
- 検品
- ピッキング
- 仕分け
- 梱包
- 運搬
- 清掃
また、製造業でも事務職に就いている方もいます。
製造業は慢性的な人手不足が課題とされており、障がい者雇用でも一定の求人ニーズがある業界です。
2.サービス業
サービス業とは、飲食店の店員やアパレルなどの販売員、ホテルや娯楽業のスタッフ、美容師、調理師など、さまざまな職業が含まれます。
また、接客業や情報サービス、学習支援などの教育サービス、公共交通機関や宅配業などもサービス業とされます。
会社がサービス業でなくても、その会社の中で「サービスを提供する仕事」をする人は、全て「サービス業」ということになるためです。
3.卸・小売業
スーパーや百貨店、コンビニ、八百屋、ドラッグストアなどは、卸・小売り業に含まれます。
ただし、販売員は「サービス業」に分類され、一方で商品管理や物流業務などの裏方業務は卸・小売業に分類されます。
また、各店舗に品物を卸すメーカー勤務の方は、卸・小売り業に入るでしょう。
4.社会福祉
社会福祉は、老人介護や障がい者介護、児童福祉、精神保健福祉などさまざまな分野があり、中でも、精神障がいをお持ちの方は、精神保健福祉方面に就職される方が多いです。
就職先としては、資格が必要ないパート勤務などで働く方が多く、主に以下のような職場が挙げられます。
- 就職先は、認知症のグループホーム
- 知的障がい・精神障がいのグループホーム
- 老人ホーム
- ホームヘルパー
- 保育園
- 放課後等デイサービス
- 学童保育
5.その他
「その他」とは、これまでに挙げた業種に当てはまらない分野のことを指し、主にIT関連の仕事が多い傾向にあります。
中でも、プログラマーやエンジニア、デザイナーといった専門職として働く方が多いです。
就労移行支援事業所の中には、IT系の資格取得を目指すプログラムを提供しているところもあります。
このような専門職は、障害者雇用の枠は少ないものの、リモートワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方が可能で、高収入の求人も多いため、週5日のフルタイム勤務が難しい方にも人気が高いです。
就労移行支援を卒業後の就職先で多い職種
就労移行支援を利用して、卒業した後の就職先で多い職種は、以下の通りです。
- 軽作業
- 事務
- 清掃
- 製造
- その他
それぞれ詳しく解説していきます。
1.軽作業
障害者雇用で最も求人が多いのが、軽作業です。
シール貼りや部品の組立、ピッキングや仕分け、梱包、運搬などが主な仕事になります。
中には、農園作業なども含まれることがあります。
意外と体力を使う作業であったり、細かい集中力を必要とする作業であったりするため、就労移行支援での作業訓練が役に立ちます。
2.事務
事務といっても、一般事務、人事、総務、経理、営業などの会社事務から、学校事務・大学事務、医療事務などさまざまです。
障害者雇用では、一般事務のデータ入力や書類の作成・処理、書類のファイリングや整理、電話応対・来客対応などの仕事が多いです。
人事や経理などは、経験や資格が問われるため、就労移行支援中に簿記検定や秘書検定などを受検しておくと、就職に有利になるでしょう。
また、基本的なPC操作は必須なため、少なくともMicrosoft Officeは使えるようにしておきましょう。
3.清掃
清掃作業も、障害者雇用で多い求人です。
ビルの清掃や、病院、介護施設などの清掃、工場の清掃、駅や公園など公共施設の清掃など、一口に清掃といっても、その就職先は多岐にわたります。
清掃は、多くの場合は資格を必要としないため、頭より身体を使う方が得意な方が向いていると言えます。
4.製造
工場の製造のほか、意外と多いのが、パン屋の製造です。
パンの製造は、朝早くから始まるため、仕事としてはきついですが、美味しいパンができると、やりがいはあります。
工場の製造では、部品の組立や検品などが多く行われています。
5.その他
これも、主にIT系の仕事が多いです。
具体的には、以下のような職業です。
- プログラマー
- エンジニア
- Webライター
- Webデザイナー
- Web制作
他に、CADオペレーターや設計士、動画編集者などの職種もあります。
【障がい別】卒業後の主な就職先
上記の就職先は、精神障がい、発達障がい、身体障がい、知的障がい、難病などすべての障がいを含めた統計からの分析でした。
ここでは、中でも精神障がいの方と発達障がいの方の主な就職先を挙げます。
なぜかというと、今までの統計と少し違う結果になっているからです。
そこで、卒業後の主な就職先を、以下の2つに分けて紹介します。
- 精神障がい者の主な就職先
- 発達障がい者の主な就職先
それぞれ詳しく見ていきましょう。
精神障がい者の主な就職先
精神障がい者の主な就職先は、以下の3つです。
1.事務的職業
精神障がい者の最も多い就職先は事務系の職業で、約3割に上ります。
特に、働いていて、うつ病などの精神疾患になった方は、前職の経験があるため、人事や営業、経理、医療事務など専門的な事務職に就けることも多いです。
2.専門的・技術的職業
精神障がいのある方の中には、もともと高い能力を持っている方も多く、専門性の高い職業に就くケースもあります。
たとえば、プログラマーやエンジニアなどIT系の技術職のほか、精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士といった資格を取得して福祉の現場で働く方も多いです。
また、教職免許や保育士資格を活かして、保育園や学校で働く方、公認心理師の資格を取得して心理支援の分野で活躍する方もいます。
近年では、「ピアスタッフ」という制度も整備されており、精神障がいのあるご本人が、当事者として支援施設などで働くという選択肢も広がっています。
3.サービスの職業
精神障がい者の方で、元々コミュニケーション能力が高い方も少なくありません。
また、就労移行支援でコミュニケーションスキルを磨き、サービス業に就く方も多いです。
接客などは、ある程度自分に自信があって、コミュニケーションスキルが高くないとできないため、苦手な方は、就労移行支援で自己理解を深める訓練と、コミュニケーションスキルを磨く訓練に力を入れましょう。
発達障がい者の主な就職先
発達障がい者の主な就職先は、以下の3つです。
1.サービスの職業
コミュニケーションに困難がある方が多いASDの方には意外かもしれませんが、ADHDの方は、意外とコミュニケーションが得意な方が多いです。
気が利くし、サッと動けるし、ニコニコしていて相手の意図を汲み取るのも上手く、サービス業には向いているかもしれません。
また、サービス業といっても、接客業だけでなく、裏方の業務も含まれるため、ASDの方に適した職種も含まれています。
2.事務的職業
事務的職業の中でも、データ入力や事務補助などのシンプルでコツコツとした作業は、ASDの方に向いています。
ADHDの方も、自分が好きな作業であれば、集中して取り組めるでしょう。
ASDの方の中には、数字に強い方もいるので、経理なども向いているかもしれません。
発達障がいの方は、自分の特性に合った仕事をするのが一番なので、一概に事務的職業といっても、中身は選んだ方が良いでしょう。
3.運搬・清掃・包装などの作業的職業
ASDの方は、単純作業の繰り返しが向いている方が多いです。
そのため、作業的職業を選ぶ方も多いようです。
障害者雇用では、こういった軽作業の求人も多いので、ずっと集中してコツコツ作業するのが得意な方は、そういった職業を選びましょう。
障がい者雇用・特例子会社という選択肢もある
就労移行支援を卒業した後の就職先はたくさんありますが、やはり多いのは障がい者雇用です。
障がいを持つと、障がいのない方と同じように働くのが難しいこともあり、配慮してもらえるとありがたいことも多いでしょう。
そこで、障がい者雇用や、特例子会社という選択肢もあることを念頭に置いておくと良いでしょう。
特例子会社というのは、厚生労働省から認定を受けた一定条件を満たした子会社で、障がい者の雇用に関して、特別の配慮をした会社です。
そこでは、従業員のほとんどが障がい者であり、親会社の社員が上司ということになります。
こういった会社では、特に配慮が手厚いので、働きやすい環境であるといえるでしょう。
事業所によって就職先は変わる
就労移行支援事業所には、それぞれ特徴や得意分野があります。
軽作業が主なところ、基礎的なPCスキルを主に学ぶところ、専門的なIT技術を学ぶところなどです。
特に、ITに特化した就労移行支援事業所では、以下のような専門的な知識と技術を身につけることができます。
- AI・生成AIの活用技術
- プログラミング言語
- Webデザイン・Web制作
- デジタルマーケティング
- 業務自動化ツール
こういったそれぞれの事業所により、就職先も当然変わってきます。
軽作業が主なところは、製造業や卸・小売り業、サービス業、事務補助などが多く、基礎的なPCスキルを学ぶところは、事務的職業が多くなり、ITに特化したところは、専門職・技術職が多くなります。
また、コミュニケーションスキルや疾病理解、心理教育などが主なところは、社会福祉系に就職する人も多いでしょう。
したがって、将来自分がどのような職に就きたいかで、事業所を選ぶ必要があります。
その事業所がどのような特徴や得意分野を持っているのかは、インターネットの情報だけでは判断が難しいところもあるため、必ず見学や体験入所に行き、スタッフに相談して確認ましょう。
サンヴィレッジの利用者の就職先事例
サンヴィレッジの利用者の就職先事例として、以下の3つを紹介します。
- 事例1.軽作業 シール貼りなど
- 事例2.農園作業・事務補助 障がい者雇用
- 事例3.事務職 総務
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事例1.軽作業 シール貼りなど
Aさんは、30代の女性です。
サンヴィレッジで、ビーズの仕分けや、チラシの封入などの作業訓練を通して、指示通り正確に作業を行うことや、時間を意識した作業ができるようになりました。
今は、ワイパーの組み立てや、商品にシールを貼る作業系の仕事に就いています。
☞ 何事にも前向きにチャレンジをして、就職につなげることができました!
事例2.農園作業・事務補助 障がい者雇用
Bさんは40代の男性です。
サンヴィレッジで、グループワークのプログラムや企業見学・実習に積極的に参加し、実習に行った企業から高評価を得て、就職が決まりました。
今は、農園作業や事務補助など、幅広い業務に携わっています。
☞ たくさんの企業見学や実習を経て自己理解を深め就職につなげることができました
事例3.事務職 総務
Cさんは、30代の男性です。
サンヴィレッジでの訓練を通じて、規則正しい生活リズムを身につけ、栄養にも気をつけて安定した生活を送れるようになり、訓練にも集中して、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)やITパスポートなどの資格を取得しました。
現在は、総務部に配属され、主にレンタカーや社宅、社員の管理業務などを行っています。
☞ 生活リズムを整え、目標を達成!総務部で輝くまでの就職ストーリー
就労移行支援の卒業生は半数以上が希望の職種に就職している!
この記事では、就労移行支援を利用して卒業した後の就職先について解説してきました。
軽作業や事務職をはじめ、多種多様な就職先があることがわかります。
障がい者雇用では、軽作業や一般事務、事務補助の仕事が多いですが、一方で、IT系の専門的な技術職や、ピアスタッフなど社会福祉系の仕事に就いている方もいます。
サービス業は、クローズド(障がい者雇用でない一般就労)の方も多いようです。
いずれにしても、就労移行支援の卒業生のうち、半数以上が希望する職種に就職しているという実績があります。
サンヴィレッジでも、利用者一人ひとりの希望や適性に応じた支援を行っており、事務職や軽作業だけでなく、IT・福祉・サービス業など幅広い分野での就職実績があります。
兵庫県神戸市中央区に2拠点、東京都文京区、埼玉県川口市にも事業所を展開しており、地域に根ざしたサポートが可能です。
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