就労移行支援を利用するメリット・デメリットとは?利用負担を軽減する方法も紹介

障がいを抱えながら就職活動をしている方や、職場での定着に悩んでいる方にとって、就労移行支援は心強い存在です。
一方で、メリットだけを見て就労移行支援の利用を決めてしまうと「こんなはずじゃなかった」「通うのがつらい…」ということになりかねません。
就労移行支援を上手く利用して就職に繋げるためには、メリット・デメリットの両面を把握することが大切です。
この記事では、就労移行支援を利用するメリット・デメリットや、デメリットとなる利用負担を軽減する方法を解説します。
就労移行支援の6つのメリット
就労移行支援に通うメリットは色々とありますが、代表的なものは以下の6つです。
- メリット1:生活リズムが整う
- メリット2:専門スタッフによるサポートを受けられる
- メリット3:スキル向上のためのプログラムを受講できる
- メリット4:職場選び・マッチングに関するサポートを受けられる
- メリット5:就労後のフォローを受けられる
- メリット6:仲間ができる・情報交換ができる
それぞれどのようなメリットなのかを見ていきましょう。
メリット1:生活リズムが整う
就労移行支援に決められた時間に通うことで、生活リズムが整っていきます。
朝早く起きて、就労移行支援に通所し、夕方まで活動して、帰って早く寝る、という生活をする習慣を徐々に身につけていくことで、生活リズムができてくるのです。
今は生活リズムが整っていない人でも、最初は週2日くらいから始めて、スタッフのサポートや訓練を通じて、週3日、4日と目標を上げていき、最終的には週5日通うことができるようになります。
また、生活リズムが安定することで、体調も安定するようになるでしょう。
障がい者雇用の企業は、特に「安定して働けるか」という点を重視するため、「就労移行支援に安定的に通所できていた」という実績は、就職活動の際に採用の評価ポイントにもなります。
メリット2:専門スタッフによるサポートを受けられる
就労移行支援では、障がい者支援の経験を持ったスタッフによるサポートを受けることが可能です。
スタッフは、障がいに理解があり、障がい者が働くためにどう支援したらいいかを知っています。
専門スタッフのサポートを受けることによって、自分の障がい特性を理解することができれば、自分に合った仕事や働き方がわかります。
そして、一緒に目標を立てて目標に向かって伴走してもらうことで、最終的に一般企業に就職するという目的を叶えることができるのです。
メリット3:スキル向上のためのプログラムを受講できる
就労移行支援では、挨拶やビジネスメールの書き方など基本的なビジネスマナーから、タイピング、Word、Excel、PowerPointなどの事務ソフト、プログラミングやWebデザインなど、様々なスキル向上のためのプログラムを受講できます。
行っているプログラムは、事業所によって全く違うため、あらかじめ自分の伸ばしたいスキルを把握しておきましょう。
一般事務職に就きたいなら、タッチタイピングとofficeソフトのスキルは必須です。
さらに高度なIT関係の職に就きたいなら、プログラミングやWebデザイン、Web製作、動画編集などのプログラムを設けている事業所が良いでしょう。
メリット4:職場選び・マッチングに関するサポートを受けられる
就労移行支援では、職場選びや企業とのマッチングに関するサポートを受けることができます。
まだ一度も就職したことがない人はもちろん、特に精神を病んで休職や退職をした人は、次の職場選びは慎重にすべきです。
今度こそ、ストレス過多にならずに長続きする職場を選ぶには、やはりサポートが必要です。
就労移行支援では、ハローワークや仕事センターの窓口の紹介や、その人に合った求人探しのサポート、企業との面接同行などのサポートを受けられます。
このようなサポートを受けながら、自分に合った職場を見つけて就職できれば、長く安定して働き続けることが可能です。
メリット5:就労後のフォローを受けられる
就労移行支援では、就職した後も「就労定着支援」を最大6ヶ月間受けることができます。
就労定着支援では、就労移行支援のスタッフが企業との間に入り以下のようなサポートをしてもらうことが可能です。
- 職場関係の調整
- 悩み事や困り事のヒアリング
- 待遇改善や合理的配慮に関してのアドバイス
企業側も、新たに雇用した障がい者に対して、どのような配慮が必要なのかわからないことが多いため、就労移行支援のスタッフによる適切なフォローは、本人にとっても企業にとっても大切です。
メリット6:仲間ができる・情報交換ができる
就労移行支援に通うと、同じ事業所に通う仲間ができます。
同じような障がいを抱え、同じ目的を持ってともに学び合う仲間は、心強い存在です。
お互いに情報交換することで、より有益な就職活動をすることもできます。
また、職場で長く働き続けるためには、コミュニケーションスキルも必要不可欠です。
同じ事業所に通う仲間とコミュニケーションをとることにより、それが訓練されてコミュニケーションスキルがアップし、面接などの就職活動にも有利になります。
就労移行支援の5つのデメリット
就労移行支援のデメリットは以下の5つです。
- デメリット1:事業所によってサービスの充実度に差がある
- デメリット2:通所・訓練への時間的コストがかかる
- デメリット3:利用期間に制限がある
- デメリット4:環境やプログラムが合わないことがある
- デメリット5:利用料が発生する場合がある
それぞれ具体的に見ていきましょう。
デメリット1:事業所によってサービスの充実度に差がある
就労移行支援のプログラム内容は、基準が決められていないため、事業所によって全く違います。
そのため、事業所によってサービスの充実度に差があるのがデメリットの一つです
例えば、就労移行支援ごとに以下のような違いがあります。
- ビジネスマナーや基礎的なビジネススキルを重視
- 自己理解や心理教育、コミュニケーションスキルを重視
- 高度なITスキルを重視
- 就職活動のサポートを重視
様々な事業所があるため、自分に合った事業所を見つけるのが重要です。
初めにできるだけ多くの事業所に体験入所してみて、どこが自分に合っているのか肌で感じることが大事です。
デメリット2:通所・訓練への時間的コストがかかる
就労移行支援事業所に通うには、時間的コストがかかります。
毎日の通勤にかかる時間と、訓練に費やす時間です。
就労移行支援は、就労するための訓練をする場所なので、すぐに就職することはできません。
徐々に生活や体調を整え、自己理解を深め、PCスキルやコミュニケーションスキルを磨き、サポートを受けながら就職活動をして、初めて就職にたどり着きます。
そのため、今すぐにでも就職したい、という方には不向きと言えるでしょう。
就労移行支援の利用期間は2年となっていますが、数ヶ月~半年で卒業して就職する人もいるので、転職や復職へのリハビリ期間と考えれば、それほど長くないと言えます。
デメリット3:利用期間に制限がある
就労移行支援の利用期間は、最長2年となっています。
この2年のうちに就職できなければ、就労移行支援は辞めざるを得ません。
ただし、自治体によっては、延長を認めているところもあります。
しかし、延長は基本的に1年〜2年が限度です。
したがって、なかなか就職できない人は、中途半端に終わる可能性があります。
デメリット4:環境やプログラムが合わないことがある
就労移行支援は事業所によってプログラムが全く違うため、事前に見学や体験入所してよく確認しないと、環境やプログラムが自分に合わないことがあります。
例えば、知的障がいの方が多い事業所と、気分障がい(うつ病・双極性障害など)の方が多い事業所と、発達障害の方が多い事業所とでは、雰囲気もプログラムの内容も全く違います。
そのため、入所する前に、必ず複数の事業所を見学・体験することをおすすめします。
自分に合った事業所でないと、通うのが苦痛になってしまうため、就労につながるどころか逆効果になってしまうからです。
就労移行支援の場合、事前の見学・体験は必須と言えるでしょう。
デメリット5:利用料が発生する場合がある
就労移行支援の利用料は、厚生労働省の定めによって決められています。
自治体が9割負担し、利用者が1割という定めですが、この1割は前年度の世帯収入によって負担上限額が変化します。
世帯収入というのは、本人とその配偶者の収入です。
親と一緒に暮らしていても、親の収入は関係ありません。
その代わり、たとえ別居していても、配偶者の収入は関係あります。
生活保護受給世帯や住民税非課税世帯は無料で利用できますが、所得が多い世帯は、月額9,300円~37,200円かかる場合があるため、注意が必要です。
ミスマッチや費用面での負担を軽減する方法は?
就労移行支援のデメリットとなるミスマッチや費用面での負担を軽減するためには、以下のような方法があります。
<1>自分の特性やスキルに合った事業所を選ぶ
就労移行支援は、自分の特性やスキルに合った事業所を選ぶのが重要です。
ミスマッチを防ぐには、とにかく事前にできるだけ多くの事業所に体験入所することが大切です。
何回か体験入所すれば、その事業所の雰囲気もだいたいわかり、プログラムの内容も見えてきます。
また、事業所のスタッフと相談することも重要です。
スタッフに自分の障がいや病状、生活に関して詳しく説明し、スタッフからも事業所のプログラムなどについて詳しい説明を受けましょう。
<2>自治体の制度を活用する
自治体によっては、就労移行支援に通う交通費の助成制度がある場合があります。
例えば、神奈川県横浜市や千葉県千葉市、松戸市、大阪府大阪市、広島県広島市などは交通費の助成を行っています。
住んでいる自治体の役所や、通う予定の事業所に確認してみましょう。
また、失業して一時的に生活資金が必要であれば、自治体の社会福祉協議会から生活福祉貸付金を受けることができます。
生活福祉貸付金は、低所得者で障害者手帳があれば、受給できる可能性が高いです。
就労移行支援に通うのに費用面で負担になっている場合は、社会福祉協議会に相談してみましょう。
<3>事業所のサポートを受ける
就労移行支援事業所の中には、事業所として交通費や昼食代の助成を行っているところもあります。
交通費や昼食代の補助があるかどうかは、事前に事業所に問い合わせましょう。
自分に合った就労移行支援事業所を選ぶポイント
自分に合った就労移行支援事業所を選ぶポイントは以下の4つです。
- 自分が求めるサービスを提供しているか
- 自宅から通いやすいか
- 環境は良いか
- スタッフや利用者との相性が良いか
自分に合った就労移行支援事業所を選ぶ大きなポイントは、まずその事業所が自分の求めるサービスを提供しているかどうかです。
例えば、基礎的なPCスキルをアップさせたいなら、基礎的なPCの訓練を重視しているところ、コミュニケーションスキルを上げたいなら、利用者同士のコミュニケーションを重視しているところを利用すれば、自分のニーズや特性に合わせて就職活動を進めることが可能です。
また、自宅からの通いやすさや、その事業所がある環境の良し悪しなども基準になります。
あまり自宅から遠いところだと、通うのにハードルが高くなり過ぎる可能性があります。
街中にあるか、自然の多いところにあるかだけではなく、事業所が綺麗かどうかなどの環境も行ってみなければわかりません。
見学や体験入所の際に、よくチェックしてみましょう。
また、人との相性やその場の雰囲気も見るべきポイントです。
体験入所の際に、スタッフや他の利用者と接してみて、相性が合いそうかどうか、肌で感じてみましょう。
居心地の良い雰囲気で、スタッフにも相談しやすく、利用者同士も和気あいあいとしている事業所なら、通ってもいいと思えるはずです。
就労移行支援に関するよくある質問
就労移行支援に関するよくある質問をまとめました。
利用料がかかるのはどんな人?
利用料がかかるのは、前年度の世帯収入が多かった人です。
世帯収入ごとにかかる利用料は以下の通りです。
世帯収入 | 自己負担上限額 |
---|---|
生活保護受給世帯 | 0円 |
概ね120万円以下 | 0円 |
概ね600万円以下 | 月9,300円 |
上記以外 | 月37,200円 |
自分が働いていなくても、配偶者の収入などで、概ね120万円以上600万円以下の収入がある人は、月に9,300円までかかります。
それを超える収入があると、月額9,400円~37,200円かかります。
9,300円や37,200円というのは自己負担上限額で、自治体によって異なるため、上記の金額は目安です。
例えば、1回1,000円かかる事業所で、前年度の収入が400万円だった人は、10回通っても9,300円になります。
一方、前年度の収入が700万円だった人は、10回通えば10,000円、20回通えば20,000円かかることになります。
退職したばかりで、前年度の収入が多かった人は、利用料が高いので注意しましょう。
通所したら賃金はもらえる?
事業所によっては、内職のような作業をするところもありますが、原則として賃金は出ません。
むしろ人によっては利用料が発生する可能性もあります。
賃金をもらいたいなら、就労継続支援事業所を検討しましょう。
利用期間内に就職できなかったらどうなる?
利用期間内に就職できなかった場合は、自治体によりますが、期間を延長することができる場合があります。
必ず延長が認められるわけではないので、2年間と考えておきましょう。
就職できなかった場合は、就労継続支援事業所を検討すると良いでしょう。
就労移行支援は一般就労を目指す方にとってメリットが大きいサービス!
就労移行支援は、障がいや難病を抱えた方が、一般就労(障がい者雇用含む)を目指して訓練を積む場所です。
専門の知識や経験を持ったスタッフのサポートを受けながら、徐々に生活リズムを整え、体調を安定させ、自己理解を深め、コミュニケーションスキルやビジネススキルを高め、就職活動をしていきます。
一人でこれらのことをこなすのは大変ですが、専門スタッフが常に伴走してくれるので、安心して取り組むことができます。
このように、就労移行支援は、障がいや難病を抱えながら一般就労を目指す方にとってメリットが大きいサービスと言えるでしょう。
就労移行支援事業所サンヴィレッジでは、一人ひとり異なる課題の解消に向けて、各種講座や就活支援を行っています。
就職活動ではどうしても就職がゴールとなりがちですが、サンヴィレッジは長く働き続けられることを一番に考えているのが特徴です。
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