就労移行支援とアルバイトの両立は原則禁止!バレる理由や金銭面の対処法を解説

「就労移行支援を受けながら、少しでも収入を得たい」と考えてアルバイトを検討している方もいるのではないでしょうか。
しかし、就労移行支援を利用している期間中にアルバイトをすることは、原則として禁止されています。
自治体や事業所に黙って働いてしまうと、支援の打ち切りや利用停止などのリスクもあり、後々大きなトラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。
この記事では、なぜ就労移行支援とアルバイトの両立が認められていないのか、その理由や金銭面で困ったときの対処法について詳しく解説します。
就労移行支援とアルバイトの両立は原則禁止
厚生労働省の基準によれば、就労移行支援の対象は「就労を希望しているものの、一人では働くことが難しい方」です。
アルバイトができる状態である場合、「すでに労働能力が安定している」と判断され、就労移行支援の対象外とみなされる可能性があります。
そのため、就労移行支援とアルバイトの両立は、原則禁止とされています。
これは、長期のアルバイトに限らず、短時間や単発のアルバイトであっても同様です。
働けないから就労移行支援に通うのであって、働けるのであれば、通う必要がないと判断されてしまうのです。
また、就労移行支援は公的資金(税金)で運用されているため、一部の人のアルバイトを認めてしまうと、「あの人は働いているのに自分はダメなの?」という不満が出てしまい、他の利用者との不公平感が生じてしまいます。
そのため、一律に「原則禁止」という取り扱いになっています。
ただし、事業所と自治体の許可があればできる場合もある(稀なケース)
ただし、特別なやむを得ない事情がある場合で、就労移行支援への通所に支障が出ない範囲でなら、ごく稀なケースとして、認められる場合もあります。
たとえば、以下のようなケースです。
- 主に生計を立てていた親が突然リストラされてしまった
- シングルの親が病気などで離職してしまった
- 貯金がなく、家賃の支払いが困難である
- 内定が出たが、初任給が出るまでの生活費がない
いずれも、「早急に生活費に困窮している」という共通点があります。
このような場合は、あくまで「通所に支障が出ない範囲」でなら、認められる可能性があるようです。
しかし、アルバイトをするには、事業所と自治体の両方の許可が必要です。
自治体によっては、このような場合でも、一律に許可されない可能性もあるので、必ず確認しましょう。
就労移行支援に通いながら隠れてアルバイトをしたらどうなる?
なかには、「隠れてアルバイトすればバレないのでは?」とお思いの方もいるのではないでしょうか。
しかし、就労移行支援に通いながらのアルバイトは、バレる可能性が高いです。
しかも、バレたら厳しい措置を受けることになります。
バレる可能性が高い
なぜアルバイトがバレる可能性が高いかというと、理由は主に次の2つです。
バレる理由1:住民税の増額
アルバイトで収入が増えて、年間所得が一定額を超えると、住民税が課される可能性があります。
就労移行支援は公金で運用されているため、行政との関わりが深く、住民税の課税により、扶養や福祉制度の確認の過程で収入状況が明らかになり、結果として事業所に知られる可能性が高いです。
就労移行支援の利用者は、住民税非課税世帯が多く、その人たちは、無料で就労移行支援を利用できます。
しかし、住民税が課税になると、無料で利用できなくなるため、すぐにバレてしまうとも言えます。
バレる理由2:遅刻や欠席の増加
では、住民税が課されない程度のアルバイトならどうか、と言っても、それでも就労移行支援に通所しながらアルバイトをするのは、かなり大変なことでしょう。
平日の昼間は就労移行支援に通っているわけですから、アルバイトをするなら、平日の夜か週末、ということになるでしょう。
しかし、それだと休む暇がなくなり、疲れてしまって、就労移行支援への遅刻や欠席が増えてしまう可能性があります。
そもそも就労移行支援に通所している時点で、何らかの障がいや難病を抱えているため、アルバイトと訓練を並行して行うことは、心身への負担が大きく、現実的ではありません。
したがって、結局無理がたたって就労移行支援への通所がおろそかになり、バレてしまう可能性が高いのです。
バレたら利用停止や退所などの厳しい措置になる
隠れてアルバイトしているのがバレたら、事業所も見過ごすわけにはいきません。
先ほども述べたように、就労移行支援事業所は公金で運用されているため、もし事業所が黙認しているのが自治体にバレたら、事業所が運営停止を受けることになるからです。
そのため、事業所にバレた時点で、利用停止や退所などの措置を受けることになるでしょう。
これが自治体にまで及べば、2年間の期限が過ぎていなくても、今後就労移行支援を利用できなくなるかもしれません。
そのため、就労移行支援を継続して利用したい場合は、アルバイトは控えるべきです。
就労移行支援に通いたいけどアルバイトしないと生活費がまかなえない!どういう対処法がある?
では、「就労移行支援を利用したいけど、アルバイトをしないと生活費がまかなえない」という場合は、どうしたらいいでしょうか。
アルバイトをする前に、まず検討すべき以下の3つの方法があります。
- 国や自治体の制度を利用する
- 家族や親族から支援を受ける
- 交通費の支給や昼食の提供のある事業所に通う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
国や自治体の制度を利用する
国や自治体の制度には、以下のようなものがあります。
1:失業保険
失業保険は、勤務先で雇用保険に加入していた方が受け取れる給付制度です。受給額は、これまでの給与のおよそ5~8割程度となっており、生活を支えるうえで大きな助けになります。
ただし、失業保険は自動的に支給されるものではなく、自ら申請手続きを行う必要があります。
まず、退職時に勤務先へ申請し、「離職票」を発行してもらいましょう。
この離職票を持参してハローワーク(公共職業安定所)へ行き、必要な手続きを行います。
手続きの方法については、ハローワークの職員が丁寧に案内してくれるので安心です。
なお、失業保険の受給には個人ごとに条件が異なり、受給可能な日数もそれぞれ異なります。
たとえば、障がい者手帳をお持ちの方は「就職困難者」として扱われ、条件の緩和や受給期間の延長といった優遇措置を受けられることがあります。
また、週4日以上勤務していた方は、正社員でなくても雇用保険に加入していた可能性が高いため、念のため退職した会社に確認してみるとよいでしょう。
2:傷病手当金
傷病手当金とは、健康保険の被保険者だった人が、病気やけがで働けなくなった時に、受給できるものです。
受給要件は、以下の4つです。
- 療養中の病気やけがが業務外の事由であること(業務内の場合は労災保険になります)
- 3日間連続して休業し、4日目以降も休業せざるを得ない状態であること
- 休業中に給料を支払われていないこと(有給休暇を使っている場合は支払われません)
- 休業及び支給の開始時に、健康保険の被保険者であること
ただし、これは社会保険の場合であって、自営業などの国民健康保険は対象外です。
また、失業保険との併用はできません。
受給額は、過去1年間の給与のおよそ3分の2に相当し、最長で1年半にわたって支給されます。
そのため、受給要件を満たしている場合は、必ず申請しておくべき制度です。
3:障害年金
障害年金は、精神疾患や難病によって、仕事や日常生活に大きな支障をきたすようになった人が受給できるものです。
医師の診断書と、申立書によって申請できます。
初診日に働いていれば障害厚生年金、働いていなければ障害基礎年金がもらえます。
受給額は、障害基礎年金1級で月額約81,000円、2級で約65,000円(2024年度時点)です。
これで生活費のすべてがまかなえるわけではありませんが、障がいや難病を抱えている人にとっては、一つの安心材料になることは確かでしょう。
ちなみに、最近は支給要件が厳しくなっているので、書類を自分で用意するのが難しいと感じる人は、社会保険労務士に頼るのも一つの手です。
4:生活保護
生活保護は、困窮している人に対して、憲法第25条にのっとり、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。
収入が、国の定める最低金額に満たず、資産もなく、親族から支援を受けることもできない場合に、申請できます。
障がい者手帳をお持ちの方は、障がい者加算もあります。
貯金も尽きてしまい、どうしても生活費に困ったら、役所の生活保護課に相談することをおすすめします。
5:各種給付金
その他にも、自治体によって、生活困窮者自立支援制度や、住居確保給付金など、生活費の補助となる給付金があります。
自立支援相談センターや、障がい者就業・生活支援センターなどに相談してみましょう。
家族や親族から支援を受ける
就労移行支援は、原則として利用期間が最大2年間と定められており、その目的は「就職すること」です。
このような限られた期間と明確な目標がある中で、家族や親族からの支援を検討してみるのも一つの選択肢です。
「家族に迷惑をかけたくない」と感じる方も多いかもしれませんが、「2年間だけのお願い。その後はしっかり働いて返す」という前提で、一時的に「借りる」という形をとる方もいます。
もし、家族や親族からの協力が得られる可能性があるのであれば、一度真剣にお願いしてみてはいかがでしょうか。
その代わり、訓練にしっかり取り組み、1日でも早く就職して家族に安心してもらえるよう努めましょう。
交通費の支給や昼食の提供のある事業所に通う
就労移行支援事業所の中には、交通費を支給していたり、昼食を提供しているところもあります。
前年度の世帯収入がよっぽど高くない限りは、就労移行支援自体は無料で通えるので、交通費と昼食が出れば、他に出費はほとんどないと言えるでしょう。
そうすれば、生活費も削減できるはずです。
事業所で交通費の支給がなくても、自治体によっては交通費の助成があるところもあるので、確認することをおすすめします。
ちなみに「サンヴィレッジ」にも、交通費の補助制度がありますので、負担が少なく通うことができます。
就労移行支援中はさまざまな制度を使って通所に専念しよう!
この記事では、就労移行支援の利用中にアルバイトができるかどうか、そして生活費の確保にはどのような方法があるかについて解説してきました。
就労移行支援を利用している間は、無理にアルバイトをせず、国や自治体が用意している制度を活用して生活費を確保し、訓練に集中することが大切です。
そのほうが、より早く、安定した就職につながり、長い目で見ても自立した生活を送ることができます。
また、障がいや病気を抱えながら就職を目指すのは、一人では難しいことも多いため、就労移行支援を利用することは、就職への近道であり、有効な方法です。
就労移行支援の「サンヴィレッジ」では、生活面の不安を抱える方にも安心して通っていただけるよう、制度利用に関するサポートや相談支援も行っています。
まずは生活費の不安を解消し、安心して就労移行支援に取り組める環境を整えましょう。