「就労移行支援は意味ない」は本当か?ミスマッチを防ぐためのポイントとは

就労移行支援に通ってはいるものの、なかなか就職できそうになくて、「もしかして就労移行支援は意味がないのではないか?」と思っている方もいるのではないでしょうか。
就労移行支援は、就職のためのステップなので、通い始めたからと言ってすぐに就職できるものではありません。
しかし、「通っている意味がない」と思いながら通うのは、つらいものです。
この記事では、「就労移行支援は意味ない」と感じてしまう理由や、「就労移行支援は意味ない」わけではない理由を解説していきます。
「就労移行支援は意味ない」と感じてしまう9つの理由
「就労移行支援は意味ない」と感じてしまう理由は、主に以下の9つが考えられます。
理由1:自分の障がいを客観的に認識できていない
自分の障がいを客観的に認識するということは、「病識を持つ」と言われます。
自分の状態をセルフモニタリングして記録することで客観的に把握し、本や心理教育などで自分の病気や症状に対する知識を得ることで、病識を持つことが可能です。
病識を持てないと、今の自分がどういう状態なのか、それに対してどういう支援が必要なのかがわかりません。
例えば、細かいところまで注意を払うのが得意な特性を持つ人が、それに気づかず「小さなことにも不安になる」とネガティブに認識してしまうと、「不安」ばかりを排除しようとして得意を伸ばすことができません。
本当は得意に対して必要な支援が受けられるのに、その機会を逃してしまうのです。
その結果、就労移行支援でのプログラムが、自分にとって必要なのかどうかがわからなくなってしまうのです。
理由2:自分の障がい特性やスキルと訓練のレベルが合っていない
病識を持てたところで、今の就労移行支援でのプログラムが自分の障がい特性やスキルと合っているかを考えてみましょう。
自分の体調がまだ安定していなくて、生活リズムも整えられず、継続して通えないようなら、まだ就労移行支援に通う段階ではないかもしれません。
逆に、高度なスキルを持っているのに、単純作業をこなしていても、意味がないと感じてしまいます。
例えば、前職でプログラミング業務を行っていた方が、就労移行支援でPCの基礎に関する訓練を目的や目標がなく受けていては、「意味がない」と感じるのは当然です。
就労移行支援は、事業所によってプログラムの内容が大きく異なります。
病識をまだ持てない人は、心理教育をメインに行っているところ、基礎的なビジネスマナーやPCスキルがない人は、それを教えてくれるところなど、目的・目標を立てて訓練に取り組める就労移行支援事業所を選びましょう。
理由3:訓練内容が自分のニーズとかけ離れている
就労移行支援のプログラムは、事業所によって様々です。
そのため、訓練内容が自分のニーズとかけ離れたところに入ってしまうと、徒労感を感じざるを得ません。
例えば、一度も社会人経験がない人が、いきなり高度なPCスキルを学んでも、就職にはなかなかつながりません。
一方で、エキスパートとして活躍していた人が、基礎的なPCスキルをもう一度学ぶのはもったいないのです。
一度も社会人経験がない方は、基礎的なビジネスマナーや、基礎的なPCスキルを教えてくれるところに入れば、自分に足りなかったスキルや知識を補うことができます。
一方で、エキスパートとして活躍していた方は、コミュニケーションスキルを磨いた方がいいこともあります。
訓練内容が自分のニーズと合っているかどうか、もう一度見直してみましょう。
理由4:頑張っているのになかなか就職に繋がらない
頑張っているのになかなか就職に繋がらないという人は、以下のような原因が考えられます。
- 自分の障がい特性やニーズ、配慮事項をよく理解できていない
- 自分の能力や特性とかけ離れた条件のところばかり受けている
- 体調が安定していなくて通所実績がない
- 履歴書・職務経歴書が十分ではない
- 面接で緊張してしまって、うまくコミュニケーションができない
このような問題を抱えていると、せっかく就職活動を頑張っても、なかなか就職には繋がりません。
就労移行支援の支援員と相談して、もう一度就職計画を練り直しましょう。
自分のどこが問題で、どうすれば改善できるのか、そのために支援員にはどう支援してもらえるのかをもう一度確認すると良いでしょう。
理由5:実際の業務と訓練内容に乖離がある
実際に自分がつきたい業務と、訓練内容に乖離がある場合、「意味ない」と感じることが多いです。
例えば、自分がITエンジニアやWebデザイナーの職に就きたいのに、wordやExcelばかり訓練していても無意味に感じられます。
高度なスキルを持っている、または身に着けたい人は、就労移行支援よりも職業訓練校の方が合っている場合があります。
また、社会人経験の長い人が、基礎的なビジネスマナーばかり教わっても意味がないと感じてしまいがちです。
社会人経験が長いものの、うつなどで就労移行支援に通っている人は、再発防止に向けた訓練を受けることが大切な場合もあります。
理由6:スタッフとのコミュニケーションが上手くとれていない
スタッフとのコミュニケーションが上手くとれていないと、適切な支援を受けられていないと感じてしまいます。
スタッフは、就労移行支援に通っている間、ずっと就職まで伴走してくれる大切な存在です。
スタッフと上手くいかなかったら、前向きに走る気もなくしてしまいます。
スタッフが自分に寄り添ってくれていないと感じたり、相性が合わないと感じたら、担当を替えてもらうか、自分をよく理解してくれるスタッフがいる事業所を探しましょう。
理由7:求人情報の質が低い
就労移行支援の事業所によっては、その事業所に来る求人の質が低い場合があります。
例えば、前職で一般事務などの業務を長年行ってきた方に対して、単純作業や短時間労働など、スキルや経験に見合わない求人ばかり紹介されるケースもあります。
自分のスキルや経験に合った職に就きたい場合は、ハローワークに行くか、他の転職エージェントを利用するのも一つの方法です。
障がい者雇用で働きたい場合は、ハローワークに障がい者専用の窓口があるので、就労移行支援のスタッフに同行してもらって、紹介してもらいましょう。
ただし、「求人の質が低い」「スキルや経験に見合わない求人ばかり紹介される」という問題は病識や自己理解を深め、支援員と共有することで改善する可能性があります。
まずは初心に戻って自分の得意・不得意を深掘りしてみましょう。
理由8:就職を斡旋してくれるわけではない
就労移行支援は、あくまでも就労に移行するための支援です。
そのため、主な目的は、生活リズムを整え、通勤できる体力と基礎的なビジネスマナーとコミュニケーションスキルを身に着け、自己理解を進め、その人の人生の目標に合った就職に向けて一緒に考えてくれるところになります。
つまり、斡旋所ではなく「就職のための訓練をして次のステップに繋げる場」ということです。
そのため、「就職を斡旋して欲しい」「今すぐにでも働きたい」と思っている人は就労移行支援は意味がないと感じる方が多いでしょう。
理由9:作業をしても工賃はもらえない
就労移行支援では、事業所によっては受注作業を請け負って、それを行うところもあります。
ただし、就労継続支援B型と違って、作業をしても工賃がもらえることはありません。
それどころか、前年度の年収によっては、利用料を支払う場合もあります。
そのため、「働いているのに金をとられては意味がない」という人がいるのも事実です。
「就労移行支援は意味ない」は思い込み!?その理由とは?
「就労移行支援は意味ない」と思う方もいるかもしれませんが、実際は意味があるサービスです。
その理由は、以下の7つです。
理由1:自己理解に繋がるから
事業所によりますが、就労移行支援では、心理教育を行っているところが多いです。
心理教育は、自分の疾病や障がいを理解し、自分の状態を把握するのに役立ちます。
また、自己分析や認知行動療法などを行っている事業所もあります。
自己理解に繋がるプログラムを受けることで、自分の特性や考え方のクセなどを知り、自分に合う働き方や条件が分かります。
その結果、就職活動で自分の強みや個性をアピールしたり、配慮事項をきちんと伝えたりすることができるのです。
理由2:規則正しい生活を送れるから
就労移行支援に毎日決められた時間に通うことで、規則正しい生活を送ることができるようになります。
病状が悪い間は、横になっている時間が多かったかもしれませんが、就職したら勤務中に横になることはできません。
そのため、就労移行支援で就職のための生活習慣をつける練習をするのです。
早寝早起きをして、きちんと朝から就労移行支援に通うことで、就職してもやっていける規則正しい生活リズムが身につきます。
理由3:通勤できる体力をつけられるから
就労移行支援事業所まで、毎日電車やバスに乗って通うことで、通勤できる体力を身につけることができます。
通勤は、それだけでかなりの体力を消耗するものです。
そのため、ずっと家にいる生活から、いきなり毎日通勤する生活になったら、すぐに疲れてしまいます。
就労移行支援に通い続けることで、長く働き続けるために必要な、毎日通勤できる体力を培いましょう。
理由4:他者とのコミュニケーションを学べるから
就労移行支援では、他者とのコミュニケーションを学ぶプログラムも多く実施されています。
例えば、人と対話するダイアローグや、自他尊重のコミュニケーションを学ぶアサーション、一緒に一つのプロジェクトをやり遂げるグループワークなど、就職して会社内で上手く人間関係を築くためのプログラムが多数あります。
他者とのコミュニケーションに難を感じている人は、積極的にプログラムに参加しましょう。
理由5:就職活動をサポートしてもらえるから
就労移行支援では、ハローワークの障がい者窓口を紹介してもらえたり、面接に同行してくれたり、履歴書や職歴書を添削してくれたりと、就職活動のサポートが受けられます。
このような就職活動のサポートは、就労移行支援でしか受けられません。
一人でやるよりも、障がい者の就職に慣れた支援員にサポートしてもらうことで、就職しやすくなるはずです。
他にも、就労移行支援を利用していることで、職場体験実習に参加することができ、そこから採用が決まることもあります。
どんな仕事でどういう雰囲気の職場なのか分かった状態で仕事を始められるのは大きなメリットといえるでしょう。
理由6:就職活動でプラスの印象を与えられるから
就労移行支援に何か月か毎日安定して通っていたという実績があれば、就職活動で相手先企業にプラスの印象を与えられます。
障がい者雇用は、「安定して勤務できる」という点を重視している企業も多いため、通所実績は、企業にとって「この人は長く継続的に働ける人だ」という印象を与え、採用してもらいやすくなります。
理由7:定着支援を受けられるから
就労移行支援では、就職した後も6か月の間「就労定着支援」を受けることができます。
就労定着支援では、就職してからの生活や勤務について、専門家からサポートを受けることができ、何か問題があれば、就職先と交渉してもらうこともできます。
また、6か月という期間が終わった後は、就労定着支援事業所を利用することでさらに3年間就労定着支援を受けることが可能です。
こういった支援が受けられるのも、就労移行支援ならではです。
このように、就労移行支援に通うことは、決して無駄ではありません。
しかし、現に今通っていて「意味ない」と感じるのであれば、スタッフとのコミュニケーションがうまくかみ合っていない可能性があります。
自分のニーズを伝えること、そしてスタッフから見た客観的な自分の評価を受け止めることが大切です。
ミスマッチを防ぐ!自分に合った就労移行支援を選ぶポイント
自分のニーズや特性に合った就労移行支援を選ぶポイントは以下の通りです。
- プログラムや訓練の内容
- 就職実績
- スタッフの専門性とサポート体制
- 事業所の雰囲気
- アクセスの良さ
- 見学や体験利用での印象
これらを重視して選ぶことで自分に合った就労移行事業所が見つかります。
特に、見学や体験利用は重要です。
事業所の雰囲気を肌で感じ、スタッフとの相性を知ることができるからです。
実際に、就労移行支援事業所サンヴィレッジには見学・体験利用をしてから入所される方が多くいらっしゃいます。
「訓練しやすい雰囲気を感じた」「支援員さんや利用者さんが挨拶をしてくれて嬉しかった」という感想をいただいています。
実際に見学・体験してみなければ自分に合うかどうか見極めることは難しいものです。
Webサイトで掲示されている内容と併せて、見学・体験利用をしましょう。
就労移行支援の詳しい選び方については以下の記事をご覧ください。
「就労移行支援は意味ない」と感じている人からのよくある質問
「就労移行支援は意味ない」と感じている人からのよくある質問は以下の通りです。
Q:就労移行支援で本当に就職できる?
平成30年度に行われた社会福祉施設等の調査によると、就労移行支援を利用した人の全体の平均就職率は52.9%で、半数以上が就職に結びついています。
そのため、就職に結びつく可能性は高いと言えます。
参照:厚生労働省|平成30年度社会福祉施設等調査サービス利用終了者に占める一般就労への移行者の割合
自分に合った事業所なら、就労移行支援は意味がある!
就労移行支援に通っていて、「意味ない」と感じてしまう、あるいは「合わない」と感じてしまう方も多いかもしれません。
しかしそれは、就労移行支援そのものが意味ないのではなく、ただその事業所が自分に合っていないだけという場合が多いです。
自分に合った事業所なら、就労移行支援は障がいや難病を抱え自分一人では就職が難しい方にとって十分意味のある制度です。
自分に合った事業所を見つけ、就労移行支援を最大限に活用しましょう。
就労移行支援事業所サンヴィレッジでは、一人ひとりの特性やニーズに合わせたサポートを行っています。
例えば、「急なスケジュール変更が苦手で断ってしまう」という方に対して、支援員が一緒に計画を立てたり、優先順位をつけるサポートをしたりすることで、徐々にやるべきことを明確化できるようになりました。
利用者様と一緒に試行錯誤しながら一緒に解決していくスタイルがサンヴィレッジの特徴です。
事業所は兵庫県神戸市に2つ、東京都文京区に1つ、埼玉県川口市に1つあります。
「就労移行支援は意味がないのでは……」と疑問を感じている方は、ぜひ一度見学や体験にお越しください。