働きながら就労移行支援を利用できる?原則NGだけど例外もあり!判断基準も詳しく解説
就労移行支援は、障がいや難病を抱えながら一般就労を目指す人たちが、働くための訓練をするための障害福祉サービスです。
そんな就労移行支援は、働きながら通うことができるのか、疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、「働きながら就労移行支援に通えるのかどうか」を例外や判断基準を含めて、事例付きで解説します。
就労移行支援期間中は「働けない」が原則

働きながら就労移行支援に通えるのかどうか、という疑問に対する答えは、結論から言うと「NO」です。
就労移行支援に通っている間は、原則として働くことはできません。
働けない理由は、次のとおりです。
- 就労移行支援は「単独で就労が困難」な人が利用する制度だから
- 働いてしまうと就労移行支援事業所への安定した通所が困難になるから
ここからは、働けない理由について詳しく見ていきましょう。
就労移行支援期間中は働けない理由
就労移行支援期間中に働けない理由は、2つあります。
理由1:就労移行支援は「単独で就労が困難」な人が利用する制度だから
一つ目は、厚生労働省の定める就労移行支援の対象者が「単独で就労することが困難で、就労に支援が必要な人」となっているからです。
アルバイトなどですでに働いている人は、行政から「単独で就労」できているとみなされ、対象外と解釈されてしまうのです。
理由2:働いてしまうと就労移行支援事業所への安定した通所が困難になるから
アルバイトなどで働いてしまうと、どうしてもそちらが優先になり、時間や労力を割かれてしまいます。
その結果、就労移行支援へ通所する時間が減ってしまったり、あるいはアルバイトで疲れてしまって、就労移行支援に通所できなくなってしまう、ということが起こり得ます。
そうすると、就労移行支援事業所に安定して通うことが困難になり、せっかく就労移行支援に通っている意味がなくなってしまうからです。
また、就労移行支援は、一般就労を目指した訓練をするため、週5日、午前10時から午後3時まで通所するのが最終目標です。
そのため、アルバイトをするなら、その後あるいは休日ということになってしまい、体力を大きく削られます。
そうして無理をした結果、体調を崩してしまうきっかけになることもあるのです。
体調を崩してしまえば、就労移行支援にもアルバイトにも行けなくなってしまい、意味がなくなってしまいます。
休職中の場合は必要と認められればOK
休職中の場合は、現在企業との雇用関係が続いている状態であるため、行政から「働く能力があるため、就労移行支援を利用する必要はない」と判断されてしまう可能性があります。
しかし、主治医から「就労移行支援を利用する必要がある」という意見書や、「精神的な疾患を抱えていて、単独での復職が困難」という診断書が出されれば、利用可能となる場合も多いです。
【例外】就労移行支援で「働きながら」が認められるケース

就労移行支援利用期間中は、原則として働くことはできませんが、例外として認められるケースもあります。
例外は、以下の5つです。
- 就労移行支援期間中に一般企業に採用され、短時間勤務から始める場合
- 短時間勤務の仕事に就いて、勤務時間を徐々に延ばしていきたい場合
- 新たな職場へのステップアップとして、短時間の仕事に就く場合
- アルバイトが訓練の一環と判断された場合
- そのアルバイトが就職に有利になると判断された場合
ここからは、例外のケースについて詳しく見ていきましょう。
就労移行支援期間中に一般企業に採用され、短時間勤務から始める場合
就労移行支援に通っている途中で、一般企業に採用されることがあります。
通常は、採用された段階で、就労移行支援は卒業ということになります。
しかし、勤務時間が週に10時間以上20時間未満の短時間勤務で働き始める場合は例外です。
勤務時間をいずれ20時間以上に延ばしていくために、就労移行支援での継続した支援が必要だと認められた場合、併用が可能になる場合があります。
ただし、就労移行支援事業所が、就労時間延長のための支援計画書を作成し、それを勤務先企業と自治体が認めた場合のみです。
短時間勤務の仕事に就いて、勤務時間を徐々に延ばしていきたい場合
就労移行支援を経て、まずは非正規で週10時間未満の短時間勤務に就き、就労移行支援事業所での訓練を引き続き受けながら働くことにより、勤務時間を徐々に延ばしてフルタイム勤務を目指す場合も、例外として認められる場合があります。
たとえば、週2日のアルバイトから、フルタイム勤務の正社員登用を目指す場合などです。
この場合、他のサービスや他機関でなく、「就労移行支援事業所を利用することが適切」であると、自治体が認めた場合に限ります。
新たな職場へのステップアップとして、短時間の仕事に就く場合
就労移行支援を利用して、新たな職に就きたいと考える人が、ステップアップとして、まずは短時間の仕事に就き、就労移行支援を引き続き利用するケースもあります。
こうした利用の仕方は、自治体の判断によっては、認められる場合があります。
この場合も、就労移行支援事業所が支援計画書を作成し、新たな職種へのステップアップが可能であるとして、自治体に認められる必要があります。
アルバイトが訓練の一環と判断された場合
就労移行支援期間中にアルバイトをすることが、訓練の一環となると判断された場合は、アルバイトが認められる可能性もあります。
ただし、あくまでも就労移行支援事業所に通所することがメインで、通所に支障をきたさない程度のアルバイトであれば、という条件です。
就労移行支援事業所と自治体に認められる必要があります。
そのアルバイトが就職に有利になると判断された場合
就労移行支援事業所に通所中にアルバイトをすることが、就職に有利になると判断された場合、認められる可能性があります。
たとえば、クリエイティブ系の資格取得を目指しながら、デザイナーの補助などのアルバイトをすることで、資格取得や就職に有利になる場合などです。
この場合も、就労移行支援事業所と自治体に認められる必要があります。
就労移行支援で「働きながら」が認められる判断基準

就労移行支援事業所に通所しながら働くには、いくつかの判断基準があります。
ただし、この判断基準は「例外」であるため、厚生労働省の定める明確な基準はなく、あくまで「慣例」の基準であり、自治体によって違いがあるため、注意が必要です。
判断基準は、以下の通りです。
- 労働時間
- 勤務日数
- 勤務時間帯
ここからは、判断基準について見ていきましょう。
労働時間
週10時間未満から週20時間未満であれば、認められる可能性が高いです。
勤務日数
週1日から週3日程度であれば、認められる可能性が高いです。
勤務時間帯
基本的に、就労移行支援事業所に通所している時間以外の時間です。
たとえば、16時以降の時間や土日、就労移行支援事業所に週5日通所していれば、それ以外の2日、といった時間帯です。
働きながら利用できる人は少数!就労移行支援中の生活費はどうする?

就労移行支援を働きながら利用するには、さまざまな制約があって難しく、働きながら利用できる人は少数です。
しかし、現実的に、収入がない中で就労移行支援に通うのは難しい人もいます。
当面の生活費に困っている方は、以下のような制度が利用できます。
- 失業保険
- 傷病手当金
- 障害年金
- 生活保護
- 交通費助成(自治体・事業所)
- 昼食提供(事業所)
特に、失業保険と障害年金は併用できるため、どちらも支給されれば、当面の生活費には困りません。
上記の制度を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
お金がないけど就労移行支援に通うことは可能?実際の費用負担や利用できる制度を徹底解説
サンヴィレッジを利用して就職した方の事例

ここでは、東京・埼玉・兵庫を拠点に事業を展開する、就労移行支援事業所サンヴィレッジを利用して就職した方の事例を2つ紹介します。
Aさん
サンヴィレッジは、スタッフや利用者さんの雰囲気が明るくて、訓練も楽しかったです。
ビーズの仕分けや、チラシの封入などの作業訓練で、指示通り正確に行うこと、時間を意識して行うことを学びました。
タイピングの訓練も楽しくて、それまでPCを操作したことがなかったのですが、今では10分間で200文字以上打てるようになりました。
週3日から徐々に慣らしていき、だんだん体力がついて、週5〜6日通えるようになったのも、自信が持てました。
今は、ワイパーの組み立てやシール貼りなどの作業系の仕事に就いています。
何事にも前向きにチャレンジをして、就職につなげることができました!
Bさん
PC入力やテプラ作成などの事務職として働いています。
工場の職歴しかなく、PCを触ったこともなかったけれど、サンヴィレッジで一から操作を教えてもらい、社内資格も取得できて、自信が持てました。
サンヴィレッジでは、PCの使い方以外にも、テプラの使い方や書類チェックなど、実際に仕事で行うような実務的な作業ができたのが、今の仕事にも役立っています。
サンヴィレッジでは、丁寧に作業を教えてもらえたのと、仲間ができたのが良かったです。
働きながら就労移行支援に通いたい方がよく抱く疑問

ここでは、働きながら就労移行支援に通いたいと思っている方が、よく抱く疑問についてお答えします。
休職者は就労移行支援に通える?
休職中の方は、復職に必要な生活リズムの確立や、体力・集中力の回復を通して、主治医や産業医との連携のもとに、円滑な職場復帰を目指す目的で、通うことができます。
ただし、以下の条件をいずれも満たしている場合に限ります。
- 勤めている企業や、地域の就労支援機関、医療機関などによる復職支援の実施が見込めないまたは困難である場合
- 本人が復職を希望し、勤めている企業と休職の診断をした主治医が、就労移行支援のサービスを受けて復職することが適当であると判断している場合
- 本人にとって、就労移行支援に通うことが、より効果的に復職につながると自治体が判断した場合
この条件は、厚生労働省の定めた基準であり、この基準に依拠して就労移行支援の利用ができるかどうか判断されます。
こっそり働いていたらバレる?バレたらどうなる?
就労移行支援事業所に通所しながら、内緒でこっそりアルバイトをしたら、バレないのではないかと思う方もいるかもしれません。
しかし、たいていの場合はバレます。
なぜかというと、雇用主は「誰にいくら給料を支払ったか」という情報を税務署に申告する義務があり、その情報が居住地の自治体に伝わる可能性が高いからです。
また、一定の収入があると、住民税が課されます。
就労移行支援を利用する際や、更新する際には、自治体が課税情報を確認するため、そこで発覚する可能性も高いです。
さらに、夜や土日にアルバイトをすることで、疲れがたまったり、生活が不規則になり、事業所への通所に支障をきたす可能性もあります。
遅刻や欠席が増えれば、スタッフが心配して事情を聴き、その面談の場でバレてしまうことも多いです。
アルバイトをしていることがバレてしまった場合、以下のようなことが起こると考えられます。
- アルバイトを辞めるよう勧告される
- 就労移行支援事業所からの退所を言い渡される
- 就労移行支援事業所が自治体に通報し、強制退所になる
- 障害福祉サービス費の返還を求められる
アルバイトか就労移行支援事業所か、どちらかを辞めざるを得ないことになり、また、サービス費の返還を求められると、多額の請求が来る可能性もあり、リスクが大きいです。
働きながら就労移行支援に通いたい場合は、必ず事前に事業所のスタッフに相談しましょう。
まずは就労移行支援に相談してみよう

本記事では、「働きながら就労移行支援に通えるのかどうか」について、例外や判断基準、実際の事例を交えて解説してきました。
実際には、働きながら通うのは簡単ではありません。
しかし、サンヴィレッジでは段階的に働きながら支援を受けている利用者もいます。
サンヴィレッジのスタッフは、一人ひとりに寄り添った丁寧なサポートを大切にしており、「働きたい」という気持ちも尊重しています。
大切なのは、その人が理想とする生活を実現するために、どう取り組んでいくかを一緒に考えていくことです。
「働きながら就労移行支援を利用したい」と考えている方は、まずは事業所のスタッフに気軽にご相談ください。




